waniの和訳録

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NF - EP

NF - EP cover

『NF - EP』解説

リリース:2014年8月5日 / Capitol CMG, Sparrow Records

『NF - EP』は、インディーズ時代のミックステープや『I’m Free』を経て、NF がメジャーと本格合流する最初の作品です。全6曲・約23分という短さではありますが、のちのアルバムのほとんどすべての要素、すなわち信仰、トラウマ、怒り、自己否定、そして「音楽だけは手放せない」という執着が、提示されています。NF 名義での初EPであり、チャート的にもブレイクスルーとなったことから、彼のディスコグラフィ全体では「物語の第0章」のような位置づけだと言えるでしょう。

第0章1ページ目としての「All I Have」

オープニングを飾る「All I Have」は、このEPのテーマソングであると同時に、NF というアーティストの「宣言文」とも呼べます。彼はここで、音楽がなければ自分は居場所を失うこと、メディア向きかどうかよりも「本当に自分が抱えている痛みや本音を語ること」を優先する、と主張します。音楽メディアはこのEPを、「実体験に根ざしたストーリーを、脆さと生々しいエネルギーをもって語る作品」と評しています。

この評価は本人の言葉にも表れています。NF は「音楽は、現実の問題に向き合うための“本当の意味”を持つべきものだ。神は、人生で最悪だった出来事のいくつかさえ良いものに変えてくれた」と語っています。彼にとってラップは、過去の虐待や怒り、母の死から生まれた痛みをそのまま押し込めるのではなく、「記録」として語り直すための手段になっているのです。

自身とリスナーに向き合う最初の「呼びかけ」

「Wake Up」では、自分の殻に閉じこもり、現実から目をそらして生きている人々(あるいは自分自身)に向かって、「目を覚まして、自分の人生と向き合ってくれ」と叫びます。次の年にリリースされる『Mansion』以降で描かれる“心の家”の世界観が、ここではまだシンプルな言葉で表現されている段階ですが、「昏睡状態の心を揺さぶりたい」という衝動はすでに明確となっています。

一方「Hands」「Only One」「Thing Called Love」「Just Being Me」では、人間関係・恋愛・神との関係・自分らしさといったテーマがさまざまな角度から描かれます。後の作品でより複雑に展開していくモチーフ──信頼や裏切り、愛と依存、信仰と疑い──が、この短いEPの中で次々と“種”としてまかれているイメージです。

本編前の予習

こうして見ると、『NF - EP』は単なるデビュー盤ではなく、のちの『Mansion』『Therapy Session』『Perception』『The Search』へと続く長編ストーリーの“オープニング”です。NF の作品群を一つの「聴く映画」として追っていくなら、このEPは絶対に飛ばせない最初の一章だと言えるでしょう。